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■『埼玉県古墳詳細分布調査報告書』
   埼玉県立さきたま資料館(1994)埼玉県教育委員会
 埼玉県内の古墳をすべて網羅している本であります。
 一昨年ぐらいから手に入れたいと思っていて、
 オークションのアラートにセットしたり、時々ネットの古本屋情報を、
 チェックしておりましたが、ないのでありました。

 県内のいくつかの図書館にあるのは知っていましたが、
 それらはほぼ「禁帯出」で、県立久喜図書館にある一冊が、
 唯一の「帯出可」なのでありました。
 ※県内の公共図書館の蔵書を一度に検索できる埼玉県立図書館の横断検索システムを利用。
 そのうち久喜に行って借りてこようと思っておりましたが、
 図書館協力ネットワークというサービスがあって、
 最寄りの図書館でリクエストすれば、最寄りまで運んでくれて、
 返却も最寄りでいいということなので、お願いしたのであります。

l-net
■これ。
 最寄りの図書館で、リクエストカードに必要事項を書き込んで、
 お願いしてから待つこと約一週間。
 「届いております」のメールが来たので借りて来ました。
 急いでなければ、なかなか便利なサービスであります。
 して、中身でありますが、分布図と一覧表がメインであります。

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■分布図の抜粋拡大。
 例えば、知りたかった野本古墳群の2、3号墳(消滅)の位置もわかるのであります。
 ○×△のマークは、保存状態を表したものであります。
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 ●:完存 良好に保存されていて、高さも保たれ、側面の破壊が3割以下。
 ▲:半壊 高さが半分程度、側面の破壊が3割~7割。
 ○:一部残存 7割~ほぼ削平(地下に周堀等が残っている可能性がある)。
 △:消滅 何も残っていない。
 ■:実態不詳 塚の可能性がある。
 □:参考地 墳丘はないが、埴輪などの散布等から古墳があったと考えられる地点。
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■一覧表の一部抜粋。
 古墳名の左のマークは指定文化財を表しております。
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 ◇:国指定史跡
 ◆:県指定史跡
 ▽市町村指定史跡
 ◎:県選定重要遺跡
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この調査報告書の目的として以下のようなことが書かれておりました。
埼玉県では、S32(1957)~S40(1964)にかけて、
県内の古墳分布調査をしているとのことでありますが、
その後、新たに発見された古墳も多く、
また近年すすむ各種開発により、破壊、消滅の危機感がある。
そのため、古墳の基礎資料を一層充実させ、
今後の各種開発との調整を図るための、文化財保護事業として、
平成元年(1989)から5年をかけて、
古墳の所在確認の実態調査を行ったということであります。

具体的には、60名以上の地区調査員が足を使って、
5500 弱の古墳の概況調査をし、
そのうち17基を事務局が詳細調査したとのことであります。
概況調査の時期は夏場で、丘陵の児玉、比企、大里あたりは、
ご苦労されたようであります。
S32の頃に比べ、山林の管理状態など土地利用は大きく変化し、
深い下草などで立ち入りが困難で、規模の計測や位置の特定に、
支障があるものがいくつかあったとのことであります。

この調査報告書がまとめられたのは1994。
今は2016ですから、すでに22年経過し、
実態の変化はあるでしょうけれども、
とても貴重な調査報告書だと思うのであります。